ベトナムはロシア支持?!

週に1回、暇なとき、ソフト開発部の面々に日本語を教えている

 

ついこないだのレッスンでのこと

 

”おかしい”という言葉の使い方を説明する上で、「ロシアがウクライナに侵攻するのはおかしい」という例文を作った

 

それを聞いた参加者5名は、モジモジしながらわたしにこう言った

 

ベトナムではロシアを応援している人が多いと思います」

 

“応援”という言葉の使い方に多少引っかかったが、それよりビックリしたのはベトナムがロシア支持だということだ

 

「どうして??」と首をかしげるわたしに参加者たちは不自由な日本語を駆使して説明してくれた

 

「昔、ロシアは選挙を手伝ってくれたからです」

 

「そうです。歴史の中で選挙の時に応援してくれました」

 

わたしのベトナムの歴史に関する知識もかなり”不自由”なのでよく分からない

 

でも、確かにベトナムとロシアは歴史的に縁が深い

 

昔の北部ベトナム人エリートたちの留学先はもっぱらロシア

 

多くのベトナム人も出稼ぎ先としてロシアを選んだ時代もあった

 

一方、わたしはアメリカとの結びつきが強い日本政府の視点で物ごとを見る

 

必然的にベトナム人社員たちとわたしとの間で、今回のロシアによるウクライナ侵攻についても見解の相違が生まれるわけだ

 

別にそれで言い争いになったり、社内の雰囲気が悪くなることはない

 

しかし、ベトナム政府がロシアを指示していることをいかにも申し訳なさそうに打ち明けたベトナム人社員たちの様子がおかしくてならなかった

3度目の遅刻

新しくオープンするお店の主要メンバーとしてついこないだ入社したベトナム人のMくん(27歳)

 

その彼に先週、解雇通告を行った

 

理由は度重なる遅刻

 

まずは入社初日とその次の日に続けて2度

 

たかが1~2分の遅刻だが、わが社はルールにとっても厳しい日系企業

 

理由がどうであれ、看過するわけにはいかない

 

それで、ベトナム人所長とわたしは彼を会議室に呼び出して叱責

 

もしもう一度同じことが起こったら、解雇する旨を告げた

 

面接時の評価が高かった分、残念としか言いようがない

 

でも、彼は店舗のアルバイトスタッフたちを管理教育するリーダー的な地位に就く人間

 

そんな人が、ルールを守ることにいい加減では話にならない

 

その後、しばらくは始業時間前に出社していたMくんだが、やはりその日はやってきた

 

3度目の遅刻である

 

今回は10分遅れの出社

 

理由は交通渋滞

 

しかし、ハノイの交通渋滞は日常茶飯事

 

しかも、他のメンバーは遅れずにちゃんと出社している

 

終わったな

 

1週間後、所長とわたしはMくんを会議室に呼んだ

 

ベトナム語で所長が、「呼び出された理由は分かってるよね」と聞いた

 

Mくんは要を得ない様子でクビを傾げた

 

3度目の遅刻から数日経っているので、“おとがめ無し”と思っていたのだろうか

 

そんな能天気なMくんに、わたしたちはその日をもって解雇する旨を伝えた

 

(※ベトナムでは試用期間中であれば、簡単に社員を退職させることができる)

 

それを聞いたMくんの顔色はみるみるうちに変わり、ついには両手でその顔を覆って、うつむいてしまった

 

恐らく、“遅刻ぐらいでクビになるわけがない”と高をくくっていたのであろう

 

しばし重苦しい沈黙が流れた

 

その後、彼は顔を上げ、うるんだ視線をわたしと所長に向けた

 

自らの不始末に関して謝罪の言葉を述べたMくん

 

さらに「もう二度と遅刻しませんので、もう一度だけチャンスを下さい」と頭を下げた

 

「そう来ると思った」 わたしは心の中でつぶやいた

 

でも、答えは当然「No!」だ

 

遅刻だけではない。仕事に対する彼のいい加減な態度は、他の分野でも見え隠れする

 

理由はなんでもいい。“切る” なら今が絶好のチャンス

 

経営陣の一人として、それを見逃すわけにはいかないとMくんに厳しい視線を向けるわたし

 

そして、首を横に振りながら、わたしが最後の一撃として言葉を発しようとしたその瞬間

 

隣に座っていた所長がこう言い放った

 

「よし、分かった」

 

ええっ?? 

 

「もう一度だけチャンスをやる」

 

呆気に取られているわたしをよそに、Mくんは所長に両手を合わせて感謝した

 

Mくんが部屋を出た直後、「ちょっと、どうしてあんなこと言うの?!」とわたしは所長に食ってかかった

 

「かわいそうだって思っちゃったんです。彼は結婚したばかりだって来たんで。同じ家族を養う立場にある男として、何とかしてやりたいって思ってつい・・」と縮こまる所長

 

頭の回転が速く、めっぽう気が強い所長の意外な一面

 

それはまた所長が多くの人に慕われる理由でもあり、わたしが彼を高く評価している理由の一つでもある

 

これでMくんは首の皮一枚でつながったわけだが・・

 

うーん

 

彼はまたやらかすと思うのはわたしだけだろうか?

 

 

食器の買い出し

まじかに迫った店舗オープン

 

先日、ベトナム人シェフたちと食器の買い出しに行ってきた

 

場所は、ハノイ旧市街にあるドンスアン市場周辺

 

Hàng Khoai(ハンホアイ)通りにはたくさんの問屋が軒を連ねている

 

普段ならここで食器類や調理器具など、必要なもの全てが手に入るのだとか

 

ところが今は状況が違う

 

中国がコロナ対策で国境を封鎖しているため、商品が入ってこない

 

わたしたちが向かった食器類の卸売業者も同様

 

気に入った食器はどれも在庫なし

 

たとえあったとしても10枚以下では話にならない

 

この状況は値段交渉にも影響

 

“全部売ってしまうと、他の客に売る商品が無くなるから”と相手は強気の商売

 

これにはわが社の優秀な交渉人(ベトナム人所長)もタジタジ

 

結局、欲しいと思っていた商品を買うことはおろか、必要な数の食器を揃えることすらできなかった

 

しかし、わたしにとっては久しぶりの旧市街散策

 

ゴミゴミ、ガチャガチャしているが、わたしはやっぱりこの界隈が好き

 

そもそもハノイに住もうと思ったのは、このおもちゃ箱をひっくり返したような雰囲気が妙に肌に合ってしまったからだ

 

今、実際に住んでいるのは旧市街からはるか遠く

 

高層ビルが立ち並び、大きな道路が交差する新開発区域

 

わたしが恋焦がれたハノイの街並みとは悲しいほど程遠い・・

日本へ一時帰国する日

本当は5月に帰りたかった

 

でも、航空券の金額が半端なく高い

 

ベトナムから大勢の技能実習生が日本へ渡っているせいだそうな

 

面倒なPCR検査もあるし

 

5月の一時帰国はあっさり諦めた

 

では6月はどうだろう

 

6月といえば梅雨

 

2年半ぶりの一時帰国に、わざわざ雨の季節を選ぶか??

 

じゃあ7月は?

 

うん、7月なら航空券も目が飛び出るような金額ではない

 

3か月以上も先のことだが、早速、ネットで予約した

 

なぜか日本から持ってきたクレジットカードが使えず慌てふためいたが、色々試している内にローカル銀行のネットバンキングから簡単に送金できることが分かった

 

7月なら会社の新規事業もひと段落着いているはず

 

PCR検査も必要なくなってるかも

 

いずれにせよ、早く日本に帰りたい

 

日本に帰って、山のように積みあがっている郵便物を処理しなければ・・・

賞味期限が切れるのはいつ??

去年の年末、ハウスメイトのベトナム人Puuがカルビーのフルグラをまとめてひと箱(6袋)注文した

 

理由は以下の2つ:

①安かったから

②コロナ隔離でいつ外に出られなくなるか分からなかったから

 

代金はもちろん二人で仲良く半分こ

 

「でも、そんなにたくさん買って大丈夫?賞味期限までに食べきれる?」というわたしの問いかけに彼女は、「大丈夫。賞味期限までには何年もあるから」

 

あれから5か月ほど経ったついこないだ、フルグラの箱を空けて賞味期限を確認してみた。するとそこには

 

賞味期限:22/04/27

 

「うわー!大変、これもうすぐ賞味期限が切れちゃうよ!!」と大騒ぎするわたし

 

「何言ってんの?賞味期限が切れるのはまだ何年も先でしょ」とPuu

 

“何年も先??”

 

「違うよ!2022年4月27日だってば!」

 

「はあ?2027年4月22日の間違いでしょ!」

 

なるほど

 

確かに、ベトナム風に解釈すれば2027年だが、これは日本からの輸入品

 

記載されている賞味期限の日付も当然のことながら日本式

 

わたしの必死の説明で、ようやく事の重大さに気付いたPuu

 

もともと賞味期限にはうるさい彼女はかなりショックを受けたようで・・

 

「わたし明日から毎日三食フルグラ食べる」

 

大丈夫だよ、Puu。ベトナムと違って、made in Japanならこの類の食べ物は賞味期限が切れてもしばらくはおいしく食べられるから

 

だが2人で6袋(1袋800g)のフルグラを食べ切るのに一体何か月かかるだろう

 

カレンダーを受け取れなかった理由

あれは今年のテト(ベトナム旧正月)前のこと

 

毎年、誰かがタダでくれる卓上カレンダーに今年はなぜか“縁”がない

 

それで会社の総務部のベトナム人副主任に、Shopeeで注文してもらうことに

 

もちろん自分で注文することもできる

 

でも、いちいち配達人からの電話に出たり、わざわざ1階まで下りて行って商品を受け取るのが面倒くさい

 

そんなわがままなわたしのお願いをいつも一手に引き受けてくれるのがこの総務部副主任

 

ところが、それから何日経ってもカレンダーが届かない。通常なら即日か、遅くとも2~3日で届くはずなのに

 

しびれを切らしたわたしに副主任はこう言った。「モシワケゴザイマセン。カレンダハコナイカモシレマセンデス」

 

「なんで?在庫切れ??」

 

「イエ。イマ、ワタシデンワニデマセンカラ。シッパー(配達の人)カラ、デンワガキテモ、デマセンカラ」

 

「何で出ないの??」

 

状況がまったく把握できないわたしに、彼女は声を潜めてベトナム語で説明し始めた

 

「借金取りから毎日何十回も携帯に取り立ての電話が掛かってくるんです」

 

「え~っ、借金取り?!あんた、借金してんの??」

 

「わたしじゃありません。借金しているのはソフト開発部のTくんです。借金取りは、Tくんが対応しないので、わたしと所長のところに毎日電話してくるようになりました」

 

Tくんというのは、わが社で唯一の南部人。ずば抜けて陽気な上に、人からどう思われるかを全く気にしない超マイペースな男の子。仕事はできるが、北部人が99%を占めるわが社では宇宙人的な存在だ

 

では、なぜ借金取りはTくんのところに電話しないのか?なぜ総務部副主任と所長の電話番号を知っているのか?

 

所長を会議室に呼び出して、詳しい話を聞いてみた

 

所長曰く、借金取りは当然、Tくんにも矢のような催促をしているのだそう。ただ借りたお金と法定金利分はキチンと返したTくん、それ以上は一銭たりとも払う義務は無いとのスタンスを貫き通している

 

しかし、Tくんがお金を借りた業者は悪名高き高利貸し。法定金利+αでの返済をしつこく要求しているのだそう

 

その業者は、ネット上で公開されているわが社の情報から、代表者である所長と経理責任者である総務部副主任の名前と電話番号を調べ上げたというのだからすばらしい

 

「こうして、所長や副主任のところに借金取りから電話が掛かってるってことTくんは知ってるの?」

 

「はい、知っています。」

 

Tくんは、そのことについて、申し訳なく思っているのだそう。でも、そこは“宇宙人”。迷惑をかけている相手に顔向けできないほど恐縮しているわけでも無さそう(笑)

 

「だったら、もっとTくんに強く言いなよ。高利貸しの言っていることが正しいのか、Tくんの言ってることが正しいのかはわかんないけど、“毎日、何十回もの電話が掛かって来て、こっちは仕事に支障をきたしている。自分できちんと解決しないんだったらクビ”ってハッキリ言いなよ」

 

それに対して所長は、「はい、そうするべきなのはよく分かっています。でもここでTを辞めさせても、問題の根本的な解決策にはなりません。いずれにせよ、せめてテトが終わるまでは、Tのために我慢してやろうと思います」と苦笑い

 

そう。ベトナム人にとってテトは特別な行事。「テトの前に争いごとを起こすな」という言い回しがあるくらい“神聖な”イベントなのだ

 

自分が盾になることによって、社員のTくんにも家族との楽しいテト休暇を過ごさせてやりたいという所長の優しい思いやりに心を打たれたわたし

 

それで、この件は日本に帰国中の社長には報告しないことにした。もちろん、悪徳業者が厚顔にも会社にやって来て問題を起こすようなことになれば、報告せざるを得ない。その時は、きっと所長もわたしも社長からお叱りを受けるだろう

 

でも、社員を信じて、物事の成り行きを見守るというのも管理職の仕事。何か問題があるたびに解雇していたのでは、社員たちとの信頼関係は築けない

 

今回も、親子ほど年の離れたベトナム人所長に教えられた

 

もちろん、頭の回転が速く鼻っ柱の強い所長は借金取りからの電話なんかにひるんではいない

 

「Tに非があるっていうんなら、警察連れてここまで来い!堂々と来れないのはそっちが法定外金利で商売やってるからだろう」とものすごい剣幕でまくし立てているのを何度も目にした。無論、高利貸しもこれにはタジタジ。

 

さらに総務部副主任に対して所長は、“しばらくの間、知らない人からの電話には一切出るな”と指示を出したのだそう

 

わたしが今年のカレンダーを手に入れることができなかった理由がまさにこれだ

 

つまりカレンダーを配達しに業者がやって来ても、「今、1階にいます。商品を取りに下りて来てください」という電話に出ることができなければ、注文は自動的にキャンセルされる

 

さて、テトが明けてしばらくたって、借金取りからの電話は掛かって来なくなった

 

どうやらTくん、法定外の金利分も支払って、問題を解決したようだ

 

最初っからそうすればよかったのに。というか、そもそも高利貸しからお金を借りるな!!

 

事が収まり、平和な時が戻ってきた

 

それで、こないだ急に思い立って、「ねえ、Shopeeで今年の卓上カレンダー注文して」と総務部副主任に頼んでみた

 

ところがネット上で探しても、テト前にあった商品が見当たらない?!

 

子供向けのカレンダーはたくさんあるが、テト前に目を付けていた素敵なカレンダーが全然ない!

 

業者に電話で聞いてもらうと、今はもうシーズンオフで扱っていないそうだ

 

ガ~ン!!

 

仕方がない、不便だが今年は卓上カレンダーなしで過ごすとしよう・・

 

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ベトナム語禁止令

「しばらくは会社でベトナム語しゃべっちゃダメです」

 

ベトナム人の所長からそう言い渡されたのは去年末のこと

 

所長曰く、わたしのベトナム語はものすごくダイレクトで、時に誤解を招いたり、相手を傷つけたりするそうなのだ

 

確かに私のベトナム語は“未熟”で、言葉だけでは細かいニュアンスのコントロールができない

 

でもその気になれば下手は下手なりに、身振り手振りや顔の表情、声のトーンを変えながら、相手を傷つけないよう工夫することぐらいはできる

 

要するに、どう話すかは相手による。“はっきり伝えないと意味がない”と思える相手には、バシッと言う

 

ただ、去年それでベトナム人新入社員を泣かせた。新入社員とは言っても、年齢は39歳。ベテランとしての経験を買われ、入社後、いきなり管理職についた女性だ

 

「分かりました、分かりました」と返事をするだけで、一向に指示に従わない彼女。挙句の果て、「あなたは私に指示する立場にない」と言い放ったので、わたしは彼女の思い違いと高慢さをハッキリ指摘した

 

“いい年して職場で泣くなんてフェアーじゃない”と思ったが、泣いた社員には謝った

 

そう。言い方がきつかったことは謝ったが、それでも“言った内容は間違っていない”と伝えた。もちろんベトナム語

 

彼女がまるで子供のように頬を膨らませながら会議室を出た後、ベトナム人の所長はわたしにこう言った。「しばらくはベトナム語で話さないでください。何か言いたい時は、わたしか日本語がわかる社員に通訳してもらって下さい」

 

親子ほど年の離れた所長にそのように言われるとは・・

 

でも彼のこの言葉には心を打たれた。「あなたのこの会社での地位を守るためにもそうしてください。あなたが傷つかないためです」

 

泣いた社員は結局、あまりに仕事ができないため試用期間が終わる前にクビになった

 

その後も、彼女に影響を受けた数名の女子社員たちがゴタゴタを起こしたが、所長に言い渡された“ベトナム語禁止令”のおかげで、わたしは巻き込まれずに済んだ。それどころか日本に帰国中の社長から、「問題収拾に手際よく取り組んだ」とお褒めの言葉をいただいた

 

こうして社内に平和が戻り、ベトナム語禁止令もいつの間にか解除された。しかし私は以前ほど社内でベトナム語を話さなくなった。それは、日本語で言って誰かに通訳してもらえる気楽さに味を占めたからではない

 

一番の理由はネイティブに通訳してもらえるので、“ベトナム人ならどう表現するか”ということを勉強できるから。正しく訳してもらえているかを自分でよく聞いて確認するので、リスニングの訓練にもなる

 

そもそもわが社の社員たちは、その半数以上が日本語ペラペラ。アラフィフのおばちゃんが気負ってベトナム語を話す必要もないのだ

 

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