上司の務め
いよいよ佳境を迎えた我が社の新規プロジェクト
昼夜を問わず、皆いそがしくあちこち飛び回っている
特にわたしと共に会社運営を任されているベトナム人所長は土日も関係なし
工事現場や業者のところにせっせと足を運ぶ毎日
今回のプロジェクトのために、日本から長期出張している社長も同様
わたしより一回り年上なのに、孫世代の所長と行動を共にし、精力的に陣頭指揮を執っている
そんな中、社長の補佐役であるわたしに与えられた任務はというと・・
会社での”お留守番”!
たまに食器の買い出しなどで、皆と一緒に外出することはあるが、わたしの主な守備位置はもっぱら事務所
もちろん、事務所での社内ミーティングにはガッツリ参加するので、そこで皆の仕事に色々と口出しもする
我が社のベトナム人スタッフは基本、目の前の作業をこなすことだけに集中しがちで計画性がない
おまけに仕事が雑なので毎回ツッコミどころ満載
まずこちらがおかしな点に気付いて、それを突き詰めていって初めてミスが発覚するということもよくある
仕事のやり方に対する考え方の違いから、ベトナム人スタッフ本人に”ミスをしている”という自覚がほとんど無いというケースも多々ある
「ベトナム人はプライドが高いので人前で叱ってはならない」とよく言われるが、わたしは人前であろうが無かろうが、ダメなものはその場で”ダメ”とハッキリ言う
もちろん理由も説明するが、心から受け入れてもらえることは少ないし、そもそもそんなこと端から期待していない
”一日中、事務所でのんびり過ごしているくせに、ガミガミうるさいオバハンだ”と思われているのは承知の上
テレビドラマに出てくるような”厳しいが情に厚くて、部下から慕われる上司役”は、わが社の若きベトナム人所長に任せて、わたしはもっぱら”厳しいお目付け役”として皆から煙たがられている
実に光栄なことだ
でも、たまにそんな自分の役どころに辟易することもある
そんな時は、高層階にある事務所の大きな窓からスモッグでくすんだハノイの空を一人眺めている