白熱のビンゴゲーム

我が社で一番盛り上がるイベント、それはビンゴゲームである

 

去年の「女性の日」。太っ腹の社長は総務部に金額にして5,000,000ドン(約25,000円)の商品を筆頭に、たくさんの商品をビンゴの景品として用意するよう指示を出した

 

「5,000,000ドンの商品?!」ベトナム人社員たちももちろん喜んだが、皆わたしほどはしゃいでいる様子はなかった。理由を聞くと、年長の社員が恥ずかしそうにこう言った。「金額は少なくてもいいので、商品は現金にしてもらえませんか」

 

現金?!さすがはベトナム人。欲しくもない商品をもらうより、少額でも現金でもらった方が嬉しいというのだ。しかし所詮はゲーム。欲しくもないものをもらって、苦笑する姿を皆に披露するのも一興だと思うのはわたしだけか?とにかく「現金が欲しい」と公言するとは、日本人にはない感覚で、社長もわたしも苦笑するしかなかった

 

その要望に応えるべく総務部は何枚かの封筒を用意した。その中には2,000,000ドン(約10,000円)が入った封筒が1枚、1,000,000ドン(約5,000円)が入った封筒が1枚、そして500,000ドン(約2,500円)が入った封筒が数枚含まれている。それをなぜか事務所の天井から紐で吊り下げ、最初にビンゴした人から順番に1枚づつ選び取ることができる。どの封筒にいくら入っているかは、所長しか知らない

 

それまでビンゴゲームなどやったことがないベトナム人社員たちは、最初あまり楽しんでいないようだった。しかし、あちこちから「リーチ!」の声が上がるにつれ、徐々に白熱。「社長、早く次の数字を読み上げてください!」と声を上げる始末

 

わたしはというと、出だしは全くと言っていいほど数字がそろわなかった。一方、数字が読み上げられる度に「リーチ!」を連発している輩がいる。見るとそれは所長!!まずいな・・と思ったその瞬間、「やったー!ビンゴ!!」とガッツポーズをしてみせたのだ

 

「どの封筒にいくら入ってるか分かってるんだから、所長は辞退しろ!」と社員たちから声が上がるのも気にせず、所長はそのまま嬉々として封筒が天井からゆらゆら揺れる景品コーナーへ。そして社長にこう言った。「社長が選んでください

 

「うん、分かった」と社長は一番分厚そうな封筒を天井から引きちぎると、所長に渡した。所長はそれを受け取ると、満面の笑みで開けて見せた。中から出てきたのは何と2,000,000ドン(約10,000円)。いきなり、所長が最高商品金額を射止めてしまったのだ

 

自作自演ともとられかねないこの成り行きに一部の社員からブーイングが起こったが、そんなことはお構いなしの所長。さっさと封筒を懐に入れてしまった

 

さて、2,000,000ドンは所長に持って行かれたが、気を取り直してゲーム再開。その内、何人かの社員がビンゴに漕ぎ着けたが、2番目の高額金1,000,000ドン入り封筒をゲットすることはできなかった

 

そうこうしている内に、何と鳴かず飛ばずのわたしもあちこちでリーチし始め、「ああ、2が来れば・・」と思った瞬間。社長の口から出た数字は何と「2」。わたしは大声で「ビンゴ!」の雄たけびを上げた

 

そして前に進み出、天井からぶら下がる封筒の一つを引っ張って開けてみた。すると、中から出てきたのは2枚の500,000ドン札!つまり、所長に次いで2番目に多いお金の入った封筒をゲットしたのだ

 

結局、あろうことか会社の管理職二人が最高額を引き当ててしまった。これにはもちろん皆からの反発を食らったが、当たってしまったものは仕方がない

 

こうして社内で初めて行ったビンゴゲームは(乱闘騒ぎに陥ることなく)“無事”終了。気のいい所長は、後日、もらったお金でみんなにピザを振舞っていたが、そこまで性格が良くないわたしは賞金を独り占め

 

総務部のスタッフからは、「独り占めすると所得税がかかりますよ」と脅されたが、お構いなし。もし本当に税金を払う必要があるなら喜んで払うさ

 

挙句の果てには、「悪い先例を作らないよう、敢えて独り占めしたの。みんなにご馳走してしまうと、今後、ビンゴゲームで高額賞金をゲットした人も同じようにしないといけなくなるでしょ」と言ってのけた。我ながらベトナム人もビックリのひどい女である