逆ギレ面接の結末

あれは去年の夏のこと

 

当時、わが社では総務部の責任者として働ける人を募集していた

 

そんな折、人材紹介会社からのイチオシで面接(Zoomでのオンライン面接)を受けた一人の応募者がいた

 

彼女は33歳。ハノイでも有数の名門大学を卒業し、日本語能力試験1級にも合格している。総務の仕事全般ができるということで、希望給与額もうんと強気だった。しかし、面接時の印象がイマイチだったので不合格に

 

ところがその“不合格”判定に社長から「待った!」がかかった。理由は、ネットの回線状況。つまり、彼女が顔をしかめたり、イライラしていたのは、回線状況が悪かったことが原因だったのかも知れないという善良な社長の判断

 

それでわたしは人材紹介会社に連絡し、一旦出した“不合格”を取り消し、再度、面接を設定してもらうことに

 

さて、注目すべきは再度の面接に臨んだ時の彼女の態度である。“不合格”は取り消したが、まだ“合格”したわけではない。でも、彼女の表情にはすでに勝者の笑みが

 

「おかしいと思っていました。わたしが不合格になるなんてあり得ませんから」と言ってのける彼女に違和感を感じたのはわたしだけだろうか?

 

その後、彼女は急に憤慨した様子で、カメラに向かってわが社が人材紹介会社に不合格の“理由”を伝えていたことに抗議し始めた

 

“不合格の理由”、つまり「彼女のどういうところが印象を悪くしたか」ということだが、伝えたの何を隠そうこのわたし

 

別に彼女に限ったことではなく、わたしは人材紹介会社から紹介された人を断る時、いつもその理由を伝えている

 

こちらとしては面倒なことではあるが、将来、謙遜な応募者の役に立つかも知れないと思いそうしている

 

ただ今回はその応募者がえらくご立腹なので、わたしは「余計なことをして申し訳ありません」と彼女に謝った

 

深々と頭を下げるわたしに、さすがの彼女も一瞬ひるんだが、「いいえ、もう大丈夫です」と答えた

 

面接が終わった後、ベトナム人の所長がわたしに聞いてきた。「あの時、どうして謝ったんですか?そんな必要なかったのに」

 

「確かに、彼女のためを思ったら、頭なんて下げないほうがよかったでしょうね」

 

「???」

 

ベトナム人の彼には理解できなかったのかも知れない。でも、面接官に謝罪を要求する応募者なんて、日本では即アウトだ

 

かくして我が社から2度目の“不採用”通知を受けることになる彼女だが、無邪気なほどプライドが高い彼女にはさぞや酷なことだろう

 

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